口腔がん

口腔がん

がんとどう向き合うか

口腔癌ですが、皆さまの中には「口の中にも癌ができるの?」と思われている方も多くいるかと思います。2014年の「データーでも口腔癌は年間7000人が罹患しているメジャーな病気です。癌であることには変わりありません。早期発見、早期治療が最も大切です。今回、「財団法人がん研究振興財団にのっとり、国立がんセンターの統計と、臨床写真を交えながら、皆さまに口腔癌についてお話できればと思い、このページを作成しました。

口腔がんの実際

口にできる癌とはどういったものか、実際の写真を見ていきましょう。口腔癌の5割以上は「舌癌」がしめます。次に歯茎にできる「歯肉癌」頬粘膜、ほっぺにできる「頬粘膜癌」下顎歯肉と舌の間にできる「口腔底癌」があります。その他に骨にできる「骨肉腫」もあります。舌にできる場合はそのほとんどが「舌辺縁」にできます。歯肉癌は「歯に沿ってできる」ことが多いです。

  • 【舌癌】

  • 【歯肉癌】

  • 【頬粘膜癌】

  • 【口腔底癌】

口腔癌発生部位

年間男性5000人、女性2,000人が口腔癌に罹患し、3,000人が口腔癌で死亡(2012年日本頭頸部癌学会より)

口腔癌の約半数は「舌」にできます。その他に「頬粘膜」「歯肉」「口底:下の歯の裏側、べろの下あたりのこと」「口蓋:上あごのこと」にもできます。年間7,000人ほどが罹患し、3,000人が死亡することから、死亡率は40%以上で、決して低くない死亡率だということがわかります。

発生状況・治療実績

◇ステージ別死亡率と治療成績(癌研有明病院治療成績より)

「発生状況と治療成績」です。ステージとは癌の進行度、それを大きさで分類したものです。癌の大きさが2センチ未満のものの生存率はとても高く、5年生存率は80%以上になります。しかし4センチを超えて、深さもますと、とたんに生存率は30%以下に落ちます。つまり癌をとりきれない、またはすでに細胞単位で転移している、ということを意味します。次に「年齢別死亡率」です。男性は50歳後半から女性では60歳を境に罹患率がぐんと増えます。

ステージ 5年生存率
Ⅰ(癌の大きさが2cm未満) 80%
Ⅱ(2cm以上4cm未満) 70%
Ⅲ(4cmを超える) 60%
Ⅳ(筋肉・上顎洞まで広がる) 30%

口腔癌は年々増加している

◇部位別罹患率(全国推移)年次推移

国立がんセンターの年次推移の統計によると、口腔癌は年々増加しており、増加傾向にある癌と言えます。また男性が女性の2倍罹患しているのがわかります。

◇年齢階級別死亡率

口腔癌に罹患した患者の年齢別死亡率です。青が男性、オレンジが女性です。65歳すぎから急激に増加しているのがわかります。またこのグラフから男性の方が圧倒的に人数が多く、男性が女性の2倍近く死亡しているのがわかります。

口腔・咽頭がん死亡率 年別・日米比較 (国立がんセンターより)

年代別口腔癌死亡率の比較の最新版です。日本では2014年にみる、口腔癌の死亡率の高さから、国が口腔癌の早期発見早期治療を目的に、日本全国の群市区歯科医師会が主体となり地域の基幹病院と連帯し、数多くの癌検診をおこなうようになりました。よって罹患数は毎年増えているのは、早期に発見されている結果であり、50%以上だった死亡率を30%代までのせてくることができました。ただしアメリカではすでに2007年の段階で20%前半で、2013年には10%代にのせてきています。これは検診率に比例するものと思われ、アメリカが半年に1回検診のため歯科医院を受診する割合が70%であるのに対し、日本では10%未満であることが、死亡率のパーセントに反映されているものと思われます。

◇2014年

罹患数 死亡数 死亡率
日本 13,000 7,415 57%
アメリカ -- -- --

◇2015年

罹患数 死亡数 死亡率
日本 19,500 7,380 37.8%
アメリカ 45,780 8,650 18.9%

◇2016年

罹患数 死亡数 死亡率
日本 21,700 7,600 35.0%
アメリカ 48,330 9,570 19.8%

都道府県別 口腔咽頭がん死亡率

「都道府県別にみる口腔咽頭がんの死亡率」です。東北地方、九州に高い傾向がり、長野県、石川県、静岡県、四国でも徳島県、九州でも大分県で低い傾向があります。

口腔癌の診断方法

「診断方法」です。口腔癌の診断は最初は視診と触診です。定期検査で発見できるのも、視診で発見できるからです。典型的な形は、「盛り上がり」や「潰瘍」または「白斑」白斑とは、ガーゼが歯茎や舌に張り付いたような感じ、のものが確認できます。「生検」視診で疑わしいと思われるものの、病変の一部を切り取って、顕微鏡審査に出します。通常この検査で何の癌で、異型性、つまり悪質性の高いものかどうかを判断します。「CT MRI」などの画像診断です。この検査により癌の広がりは確認します。その後治療法を確定していきます。

1.視診・触診

口腔癌の診断は視診と触診から始まります。典型的な口腔がんは盛り上がったような塊やしこりを伴う潰瘍です。また白斑を伴う場合もあります。

2.生検(病理検査)

視診、触診で癌が疑われた時最初に行われる検査です。異常のある病変部を小さく切り取りその組織を顕微鏡で観察して癌かどうか診断します。

3.CT・MRI・PET(画像検査)

がんの広がりを正確に診断するために行われます。首のリンパ節への転移や肺や肝臓などへの転移をみつけるのも画像診断の大きな役割です。

病期(ステージ)

病期とは癌の進行程度を示すものでⅠからⅳまでに分類され、ⅳ期は6cm以下のリンパ節転移がA、6cm以上のリンパ節転移がB、臓器に転移がCと表示されます。

前述で、病期の大きさに限局したステージとその5年生存率をしめしましたが、上に示すものが、「正式な舌癌取扱い指針によすステージ分類」です。ⅳだけは、「舌内におさまってるもの」と「顎骨にいたるもの」に分けられます。

治療(手術療法)

口腔がんの手術には以下の3種類があります。一つは「切除」もう一つは「頸部郭清術」、そして「再建術」です。

1.原発巣手術

癌がある部分を原発巣といい、この部分を切除する手術です。安全域といって癌の周囲の性状組織も含めて大きめに切除します。だんだんグロテスクな写真になってきましたが、左上が舌にできた癌で、その下の写真がそれをヨードで染め出したものです。切除マージンは腫瘍(癌)から必ず10mm以上離し、深さもそれと同じだけえぐります。右が切除後です。かなり大きくとっているのがわかるかと思います。

2.頸部郭清術

首のリンパ節に癌が転移した場合、または転移が疑われた場合に行われる手術です。転移したリンパ節のみを摘出するのではなく、他のリンパ節及びリンパ節周囲の脂肪組織や血管・筋肉なども同時に切除します。この手術をする場合は可及的に血管と、神経を残すことを心がけます。

図の小さな黒がリンパ節です。首には数十個のリンパ節があります。

3.再建手術

原発巣手術により欠損が生じた部位に体の他の部分の組織を移植して欠損を補てんする手術です。腹部下肢や上腕などの皮膚や筋肉、腸骨(腰骨)などが用いられます。「再建手術」手術で切除した部分を補うために、体の他の部位から組織をとってきて移植する手術です。骨も一緒に切除した場合は骨移植、腸骨移植も同時に行います。同時に血管吻合して植皮する場合も大きいケースではしばしばあります。再建時に使う皮弁は主に、腕や足からとってきますが、よって術後舌から毛がはえてしまうこともあります。舌の再建の場合、腕や足の皮膚をとってくることが多いので、術後、舌から「毛が生えてしまう」ことがしばしばあります。

◇舌癌の症例

ステージⅡでリンパ節転移なし。潰瘍型。舌を部分切除後、腕の皮膚を使い皮弁をお越し、植皮した症例です。

  • 【舌癌・舌部分切除・前腕皮弁】

  • 【再建後4か月】

◇下顎骨肉腫に対する原発巣手術の例(顎骨再建手術)

再建は舌や頬粘膜だけでなく、硬組織、あごの骨にも行われます。腫瘍組織及びその周囲の顎骨を一塊として切除後、メッシュトレーや、カスタムメイド人工骨を用いて再建します。このようにして術後の変形が少ない良好な状態を作り出します。

左から下顎骨腫瘍:術前、メッシュトレーと自家骨再建後、術後6か月

その他の治療法

切除以外の治療法として、放射線療法や、化学療法が行われます。また放射線をあて、腫瘍を小さくした後、切除術を行い、化学療法を併用する方法もあります。化学療法はその副作用が大きく、またやめるとその後朱王がリバウンドをおこし大きくなることから、外科的に切除できる小さい物には、原則的に行われません

◇放射線療法

高エネルギーX線などの放射線を利用して癌を小さくしたり消失させたりする治療法です。体の外部から照射(放射炎を当てること)する外照射と、放射線が出る特殊な針を直接に癌に刺して照射する組織内照射があります。

◇化学療法

抗がん剤による治療法です。初期の癌(Ⅰ期)に化学療法が行われることはありません。一般的には進行したがんに対して手術療法や放射線療法と併用して用いられます。おおくは点滴で投与されます。

各治療法の問題点

大きな手術では体に負担が大きく、食事や会話の障害や、顔の変形などが生じることがあります。放射線療法では口内炎や皮膚炎白血球の減少などが生じ、場合よっては唾液の分泌の減少、それに伴う口渇がでたりします。化学療法では、白血球・血小板の減少、肝・腎機障害、脱毛、口内炎、下痢、嘔吐などが生じます。したがって、各治療法の欠点を十分考慮したうえで治療が進められます

病期(ステージ)

病期とは癌の進行程度を示すものでⅠからⅳまでに分類され、ⅳ期は6cm以下のリンパ節転移がA、6cm以上のリンパ節転移がB、臓器に転移がCと表示されます。

前述で、病期の大きさに限局したステージとその5年生存率をしめしましたが、上に示すものが、「正式な舌癌取扱い指針によすステージ分類」です。ⅳだけは、「舌内におさまってるもの」と「顎骨にいたるもの」に分けられます。

経過観察

通院

治療が終わった後は、通院による経過観察が必要です。再発や転移の有無の確認のため、レントゲンやCT,MRI,PETなどの画像検査などを行います。口腔癌では少なくとも5年間の経過観察が必要です。

癌の治療後は口腔癌だけでなく、全てのがんにおいて同じですが、長期の経過観察が必要です。いつ再発、転移するかわからないため。よって患者さまとは一生のお付き合いになります。以下にお口のチェック方法を載せました。まず「唇」です。表面にできる場合もありますが、裏面にもできます。ので、指で裏返しし、腫脹、しこり、白斑がないか確かめます。「次に頬粘膜、ほっぺです」指を口角にかけてぐ~とひっぱり、白斑やしこりがないか確かめます。そいて「上あご」歯茎とともに調べます。最後に舌です。舌の好発部位はわきの奥です。なのでティッシュなどで引っ張り出し、左右に振って、よ~く奥の方まで見て下さい。

予防

口腔がんのリスク

がん予防の第一は「タバコ」です。タバコは粘膜に対して有害な刺激を与えます。また貧血状態を作り、歯肉を線維化してしまいます。アルコールも摂取しすぎは問題です。アルコールも粘膜に対しては有害刺激のため、長時間、毎日、服用しすぎることで癌を誘発します。「合わない入れ歯」なぜこれが癌になるかというと、合わないので、いつも歯茎や粘膜に悪い刺激を与え続けます。この刺激によって傷ついた細胞が突然変異を起こし、癌化するからです。

では心がけることとは。「暴飲暴食、喫煙をしない」「口の中を清潔に、しかも健康に保つ」そしてなんといっても定期健診です。検診によって自分でみつけることのできなかった癌を早期に発見することができるからです。当院でも13年で3人の癌患者を、歯のクリーニングで発見しました。全て舌癌で、全て男性でした。

◇「タバコ」と「お酒」

タバコとお酒は口腔癌の最大のリスクです。タバコを吸う人は吸わない人の約7倍、飲酒の習慣がある人はない人に比べ6倍口腔癌が発生するという調査があります。また「タバコ」と「お酒」には相乗効果があり療法の習慣がある人は片方だけの習慣がある人の数倍の発癌の危険があると言われています。

◇虫歯・合わない入れ歯・歯周病

虫歯でかけていたり、合わない入れ歯を入れていることにより舌や歯肉、頬粘膜を傷つけることの刺激により口腔癌の危険性を上げることも指摘されています。

◇口腔がんにならないための心がけ

①タバコ、お酒を控える、②偏食せず栄養のバランスのとれた食事をする、③歯磨きやうがいなどを行い口の中を清潔にする、④壊れた入れ歯、合わない入れ歯、治療していない虫歯などのとがった角、壊れた被せ物などを、そのまま放置しない

◇かかりつけ歯科医を持ちましょう

かかりつけ医を作り、定期的な診察を受けましょう。定期健診により、早期発見早期治療に結びつけましょう。

早期発見

1.口腔がんが心配になったら

あれっ?と思ったら受診する(歯科、口腔外科、耳鼻咽喉科)

2.口腔がんの専門家

口腔癌を治療する専門家は「口腔外科」「耳鼻咽喉科」「頭頸部外科」です。これらの科がどこに行けば良いかわからない、という場合は歯科医院や耳鼻咽喉科を受診して、紹介してもらいましょう。

3.注意が必要なじょう

口の中は鏡でチェックできます。定期的にお口の中をチェックしましょう。次のページに紛らわしい症例と、癌症例の写真を載せてあります。参考にしてください。

各部位の症例

◇舌のがん

  • 【白板症(前癌病変)
    舌表面がざらざらして盛り上がっている

  • 【舌癌(上皮性)
    表面にしこりががあり、白色斑がある

  • 【舌癌(潰瘍型)
    舌の一部が陥没し、周囲が腫れている

◇頬粘膜疾患

  • 【頬粘膜白板症(前癌病変)
    白いガーゼのようなものが張り付いて、表面がざらざらしている

  • 【頬粘膜上皮癌】
    白斑と発赤が混在しており、腫れを伴い、硬結がある

◇歯肉癌・口腔底癌

  • 【歯肉癌(下顎)

  • 【歯肉癌(上顎)

  • 【口腔底癌】

紛らわしい病変。さあ、一緒に考えよう!

  • 【扁平苔癬(癌ではない。アレルギーの一種)
    表面にレースのひだ状のがら硬結は触れない

  • 【白板症(前癌病変)
    表面に白斑があり、ざらざらしている、少し盛り上がりがある

  • 【舌癌】
    白斑と紅斑の混在型隆起を伴い、硬結を触れる

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